ひと昔前よりも、ピアノを習う子どもは少なくなってきたとは言われますが、それでもまだまだ子どもの習い事としては根強いに気があるピアノ。

しかしピアノを習うのならば、楽器を購入しなければならず、習い始めには高額な費用がかかってしまう場合があるのもピアノという習い事の特徴でもあります。

ピアノが上達するためには、やはり「電子ピアノ」ではなく「ピアノ」を購入することが望ましいのはいうまでもありません。

「アコースティックピアノ」をもっている人の割合はどのくらい?

さて、実際にピアノを習っている人のうちアコースティックピアノ(電子ピアノではない)本物の?ピアノ)を持っている人はどのくらいいるのでしょうか。

2014年のある限られた地域での統計ですが、43%の人がアップライトピアノを、33%の人が電子ピアノを、14%の人がキーボード・エレクトーンを、10%の人がグランドピアノをもっているという結果が出ています。

アップライトピアノとグランドピアノを合計すると「アコースティックピアノ」で練習している人は半数を少し超えます。
それでは「アコースティックピアノ」と「電子ピアノ」の違いを様々な側面から比較してみたいと思います。

アコースティックピアノと電子ピアノの違い

比較的歴史の浅い新しい楽器とはいえ、今ではピアノ学習者が購入する楽器としてメジャーになった電子ピアノ。
それに対して長い歴史のあるアコースティックピアノ(以下「ピアノ」と記します)、この2つの楽器の違いは意外と深いものなのです。

①「ピアノ」と「電子ピアノ」の一番大きな違いは「発音の原理」

音楽の歴史上長く愛されてきた「ピアノ」の発音原理は大変原始的で、とてもアナログなものです。

【ピアノの発音原理】
ピアノの発音原理は、鍵盤を押さえたらピアノ内部で鍵盤にくっついている「ハンマー」が「弦」を「打つ」ことによってその「打たれた弦」「ピアノのフレームや素材の木」など、ピアノそのものが鳴る仕組みになっています。
【電子ピアノの発音原理】
電子ピアノの発音原理は、鍵盤を押さえたらスイッチのようなものが押され、押されたスイッチが電子音となってスピーカーから聴こえてくるという仕組みになっています。

ですので、

ピアノは 「楽器そのものが鳴っている」というある種の感動があるのに対して、電子ピアノは「スイッチ」を押したら音が鳴った」

と捉えていただけたら良いかと思います。

②2つめの違いは、「表現力」

「電子ピアノでも音量の変化を用いた表現」はできますが、電子ピアノでできることはそこまでです。

ではこれ以上のことをピアノで何ができるのでしょうか?

【 電子ピアノではできないけれど、ピアノではできる大切なこと 】
ピアノでは「音量の変化」に加えて「強弱の変化」「質量(重さや軽さ)の変化」「温度(温かい音色なのか冷たい音色なのか)の変化」「空気感の変化」など、実に 緻密で繊細な表現を行うことができます
これはやはり、ピアノは「楽器全体」が音源であるのに対し、電子ピアノの音源は「スピーカー」であるという差にあります。

平易な言い方をすれば

「ぶっ叩くように鍵盤を弾けばぶっ叩かれたような音色がして、慈しむように鍵盤を弾けば優しい音色がする」のがピアノであり

「ぶっ叩いて弾いても慈しんで弾いても音色(音の雰囲気や質量など)は変わらず、音の大きさだけが変わる」のが電子ピアノです。

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③3つめの大きな違いは「価格」

家庭用として一般的なアップライトピアノでしたら、新品で30万円台~80万円程度、グランドピアノでしたら100万円程度から1000万円を超えるものまで、電子ピアノはピアノ学習者に適したモデルと考えると最低10万円程度~40万円程度に収まります。

一概には言えませんが、あえて平均値で比較してみるならば、電子ピアノでしたら20万円、アップライトピアノでしたら50万円、グランドピアノでしたら200万円とあくまでも一例ですが捉えていただけたらと思います。

電子ピアノのメリット・デメリット 

可能ならばグランドピアノで毎日練習されるのが良いに決まっていますが、あまり一般大衆的とは言えません。

それではアップライトピアノならば可能かもしれない…というご家庭は少し増えるかと思います。それでもやはりお子さまはこれからお金がかかってくるという時期。

アップライトピアノの購入も厳しいので、うちは電子ピアノで…というご家庭ももちろん多くあります。

それではここでは、電子ピアノをもつことのメリットとデメリットについて、費用・利便性・表現・弾き心地・耐久性の5つの面からお伝えしたいと思います。

電子ピアノのメリット
「低価格」「調律不要」「持ち運び容易」

電子ピアノのメリットは、楽器自体の価格がピアノに比べて安いことに加え、ピアノと違い1年ごとの調律の必要がありません

調律はアップライトピアノでしたら1万円前後の費用がかかりますが、電子ピアノはそのような毎年決まってかかる費用というものがありません。

また、電子ピアノはヘッドホンを使えば夜間や早朝でも練習ができるというのも大きなメリットのうちの一つです。そしてボリュームの調節ができるので、ヘッドホンをしたくない時には音量を絞って練習をすることもできます。

そして、軽量の電子ピアノの場合は大人が2人いれば持ち運びが容易にできるので、引っ越しが多い家庭などは助かることと思います。

(ピアノでしたら専門運搬業者にお願いをして最低2~3万、距離や階数によってはそれ以上かかります。)

以上が電子ピアノをもつメリットです。

電子ピアノをもつことによるデメリット
「表現力」「指疲れ」「耳疲れ」「故障」

一番のデメリットはピアノに比べて「表現力が圧倒的に乏しい」ということです。
それは、先ほど申し上げた「発音の構造の違い」が原因です。

電子ピアノでは音の「強弱」の変化しかつけられないので、音色が持つ豊かな横の広がりを表現することができません。

よって、音楽表現に必要な本当の意味での「良い耳」が養われないといったことにどうしてもなってしまいます。

そしていくら電子ピアノがピアノに近づいてきたとはいえ、指先に感じる弾き心地はやはりピアノの方が「気持ち良い」です。

電子ピアノで長時間練習をするとは「指が疲れる」と感じる人もいるようです。

指が疲れると同時に、スピーカーから出てくる電子音をずっと聴き続けることになるので「耳が疲れる」と感じる人もいるそうです。

「指が疲れる」も「耳が疲れる」も、1時間や2時間など長時間練習をした時の場合ですが、こういった可能性があるということをうっすらとでも覚えておくと良いかと思います。

そして楽器とはいえ、電子ピアノは電子機器ですので「故障」する場合があります。
筆者は、2年で故障する電子ピアノと一方で15年使用できた電子ピアノに出会いました。

「15年使用できた」のは筆者が子どもの頃に使っていた楽器です。
2年で故障してしまった比較的新しい電子ピアノは新しいだけに構造が複雑になり、扱いに十分注意を払っていないと故障しやすいのかもしれません。

電子ピアノでは上達しない!?

よく「電子ピアノでは上達しない」という話を耳にしますが、はじめに結論を申しますと「半々」といったところです。

【関連記事】「電子ピアノで練習してもピアノは上達しないって本当?」

「半々」とはどういうことかと言うと、「指を速く動かす」などの技巧的な面に関しては、最近の電子ピアノのタッチはピアノのタッチに近づいてきていますので、習得できる技術にそれほど大きな差はないかと思います。

しかし一方で「音を作る」などの音楽的な表現の面に関しては、差が出てしまうのは仕方がないようです。

理由は、先ほども述べましたが、ピアノでは「音量の変化」に加えて「強弱の変化」「質量(重さや軽さ)の変化」「温度(温かい音色なのか冷たい音色なのか)の変化」「空気感の変化」など、実に緻密で繊細な表現を行うことができるのに対し、電子ピアノでは「音量の変化を用いた表現」しかできないからです。

ですので、「自分で音色を作っていく、磨いていく」という作業が、電子ピアノでの練習では行うことができません。

このように聞くと断然、ピアノで練習をしたい、またはさせたい。と思う方がほとんどかと思います。しかし、住宅事情や経済的な事情により叶わないご家庭も多くあるのも事実です。

そこで、ピアノの購入がどうしても叶わない、けれどピアノで練習をするメリットは痛いほどわかった。

そんなご家庭のみなさまにおすすめしたいのが、

「自宅では電子ピアノを購入して、時々ピアノのレンタルをする」

というやり方です。

レンタルといっても、月極めで料金を支払って自宅にピアノを運び込む本格的なレンタルもありますが、それよりもお手軽なのが

ピアノ教室や公共の機関でピアノを借りる

ことです。

この場合は、ピアノを自宅に運び込んで借りるという大掛かりなものではなく、こちらが音楽教室や公共の機関に出向いて1時間単位〇〇百円、〇〇千円、など支払って弾かせてもらうものです。

大手音楽教室を中心に、レッスンルームのレンタルが行われていることがありますので、ぜひお住まいの地域の音楽教室でそのようなレンタル業務を行っていないか調べてみてください。

金額は、某音楽教室でしたら30分間のレンタルで見るとアップライトピアノで800円、グランドピアノで1100円、グレードの高いグランドピアノでしたら1600円、と言った料金となっていますので、ご参考になさってください。

また、公民館でも可能な場合があり、公民館でしたら1時間300円程度で借りられることもあります。(ただし公民館は個人練習の貸し出し不可の場所もあります。事前にリサーチしてみてください。)

ピアノを時々レンタルすることによって、鍵盤をどのように押したらどんな音が返ってくるか、という演奏に一番大事なことが感覚的にわかってきます。

そのような経験を時々でも積み重ねていくことによって電子ピアノで練習をする時にも、タッチに気を付けて電子ピアノを弾くようになり、同時に頭の中ではピアノの表現豊かな音色が響くようになるでしょう。

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まとめ

電子ピアノとピアノ、どちらを購入すべき?と迷っているならばもちろん「ピアノを購入すべき」なのですが、様々な事情で叶わないこともあります。そのような時は、電子ピアノでも良いものはたくさんありますので電子ピアノを購入して時々ピアノのレンタルを利用するのが現実的かもしれません。

そしてやはり「ピアノが欲しい!」となった時には、住宅事情が厳しいご家庭の方はサイレント機能を付ける、または思い切って夜間の練習用に電子ピアノを購入して2台使いする、または防音対策を行うなどして可能になるかと思います。

中古ピアノでも探せば良いものはありますし、ローンを利用すれば月々1万円以下で購入することもできますので、ご検討ください。

ただし「電子ピアノよりもピアノの方が良い」と申し上げましたが、これは「軽自動車よりも普通車の方が良い」という感覚に近いのかもしれません。

近所を乗りまわすのが中心でしたら軽自動車でもそれほど不便を感じることはないでしょうし、逆に毎日高速道路を使って長距離を通勤するような生活でしたら、軽自動車では「もっとスピードを楽々出したい」「加速した時の音が気になる」など、少し不便を感じてしまうかもしれません。

ピアノに置き換えていえば、音大に進むことを視野に入れて上級の曲をバリバリと弾きこなせるようになる必要のある人はぜひピアノを(しかもいつかはグランドピアノを)、校内の合唱コンクールなどの伴奏や、校歌を弾けるようになってもらいたい、趣味で楽しんでもらいたいという目標でしたら電子ピアノでもそれほど不自由することはないと思います。

また、中学や高校になって「やはり音大に進みたい」となった時も、ずっとピアノで練習をしてきた生徒さんとは当然差はあるでしょうけれど、それまで電子ピアノで練習をされていたとしても絶望的に遅かったということはきっとありません。

技巧的な面はある程度電子ピアノでも養われているはずですので、音楽的な面を努力によってカバー可能かと思います。

ピアノを習うことでお子さまにどのようになってもらいたいのか、ご家庭の住宅事情、経済事情などを照らし合わせて、ピアノと電子ピアノのどちらを購入すべきか考えてみてください。

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